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2006.05.31 配信
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特定非営利活動法人 ITSSユーザー協会 専務理事 高橋 秀典 氏 |
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特定非営利活動法人 高度IT人材アカデミー 理事・事務局長 中村 共喜 氏 |
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高橋今、経済産業省の依頼で全国をまわっているのですが、上は 5000 名を超えている大企業から地方の会社、そしてユーザー企業までたくさんの会社を回ったのですが、IT業界はぜんぜんダメだなと感じるのですね。まず落ち込むのですよ。業界の中にいるので第三者的に見られないのですが、こんなにダメなのかと追い打ちをかけられるのです。本当に一回は、もう辞めようと思ったこともあります。人材の育成や教育を考えていないし、そんな暇も時間もないと言うのですね。周りが決めることだから我々は決められないとか、それから教育は大手だからできるのだとかですね。それをず〜っと聞いているとパターンがあって、自分はもう上がったと思っている人、つまりできるだけ自分はもう何もしたくないと感じている人と、責任は感じているが会社はどこかに売って、もう社長業はこれで終わりと思っている人ですね。
中村そういう方、残念ながらおられますよね。
高橋できるだけチャレンジはしたくないのですよね。
中村たまに他国の脅威とかいう話をするのですが、時々言われるのは「今の所、あまり影響はない」とおっしゃるのですね。足音が聞こえないらしいのです。そしてそういう方は「お宅の教育は高くて長い」と言われるのですね。次にこれを受けたら明日からどれぐらい儲かるのだ?と。勿論投資ですからリターンは必要だし、実際リターンはあるのですが、そういう方にとっては、基本的なプログラミングトレーニングは、それを素人が受けると明日から派遣先に月60万円でも送り込めて直ぐリターンがあるけど、アーキテクトの養成の様な教育は、システム全体の安定稼動などに効いてくるのですが、そのサービスを経験した顧客から再度依頼が来る様になるまで多少時間がかかる為、それが待てないのかも知れませんね。だから経営者の方々の考え方が変わらないと積極的な人材育成投資はないな、大変だ、と思っています。
高橋たぶん、IT業界というのはきちんと定義されてないと思うのです。まず、そこがダメだと思うのですよね。どこの業界でも競争があって、戦略という言葉が使われている。戦略とは要はコンペチターを殺すことで、だから気安く戦略という言葉を使うなと言われる重みがある。当然、そういう業界にはマーケッターもいて、マーケットを分析して、自分の会社の位置づけをやっているのですが、そういうことをやっているIT企業って聞いたこともないのですよね。製品ベンダーでマーケティングをやるのは当たり前なのですが、会社戦略のマーケッターっていなんですよ。
中村私は時々、初めて伺ったお客様に「御社のコアコンピタンシーは何ですか?」と聞きます。で、そのコアコンピタンシーを伸ばすために何をやっておられて、足りないところをどういうパートナリングをされて、それで3年後にビジネスのトップラインをどれ位、ボトムラインをどれ位で、どの様なビジネスモデルだから、アーキテクトや、業務設計者、運用設計者が何名位必要で、プロジェクトマネージャは何名位必要か、という様なプランを概要だけでもお聞かせ頂けませんかとお願いします。しかし、どうやらそういうものはあまり作られた事がない会社もおありの様なのです。方法が解らないのかなとも思うのですが、それならツールや、やり方をお話しすれば済みますが、そんな事を考える余裕が今はないとおっしゃる所は深刻だと思います。
高橋考え方が問題ですからね。
中村私は、実は5年前には、ある外資系の会社でアジアのマーケティングの責任者をしていた事がありまして、その時アジア 14 カ国をグルグル回っていました。結論として痛感した事は、他のアジアの国の人達は危機感と上昇志向が日本人と比較にならない程高く、勉強も熱心で、とにかく死に物狂いで働いていたんですね。
高橋勤勉だと言われていましたよね。日本人は、昔は・・。
中村日本は恵まれているのだと思います。島国で、経済は他国に開放されているとは言え、ITサービスで言えば、内需はかなり国内供給で満たしている。生死をかけてやらなくても系列的な縦の繋がりもあって、潰れない程度に仕事はある。一方で韓国、中国、台湾、東南アジアの人達は、国によって多少違いますが、上昇志向の強い国内の競合は沢山ありますし、隣の国からも敵はやってきます。新しい技術の導入にも貪欲ですし、毎日、生きるか死ぬかという戦いをして自分を高めているのですけど、日本へ帰ってくると、生死の問題で困るという実感がないからどうものんびりしている。これはまずい、と思いました。
高橋そういう感じって蔓延していますよね。私は 1993 年にオラクルに入社したのですが、何回もそういうことを現場でやってきたのです。というのは入社して3年ぐらい経つと、もっとも優秀な人材からモチベーションを下げていく状況があって、この会社ではもうやることはないのじゃないかと思ってしまうのですね。そうじゃないけど、そう思ってしまうのです。たとえば単一製品のデータベースを扱っていて、同年代のパートナーさんと付き合うと、彼らはもっと幅広くてシステム構築から見ればデータベースは部品だから、そこでものすごく危機感を持って、この会社はダメだと思うのです。でも、何をやりたいかというのも分からない。つまりゴール設定ができない。それはよくわかるのですね。自分も何になりたいかわからなくて悩んでいたし、会社からこれをやれということしかできていなかったのです。自分から手を上げてやったことは一度もないのです。で、研修をやれということで1年間やって、そこでオラクルマスターを作ったのですけどね。それは達成感もあって良かったのですが、それは会社からやれと言われたことで、自分も正しく後輩を指導できたとは思っていないのです。そういう世界でやって来て、後輩が残れば、また下が入ってきて指導していく。どんどんそういう感覚って拡がっていきますよね。そして今はそれがピークだと思うのです。ピークだからどこかで爆発する。そうすると、本当に 57 万人もエンジニアは必要じゃないですよね。
中村企業が従業員を選ぶ時代から、従業員も企業を選ぶ時代に本当になっていますからね。経営者はうかうかしていると自分の会社に人が来なくなりますよね。
高橋経済産業省が出している「ITスキル標準」の「経営者向け概要書」の最後に導入企業の事例が載っているのですよね。そこで今日発表される彼らは賢いので、これを採用の時のPR資料に使っているのです。自分のところが作ったパンフレットなんてあって当たり前じゃないですか、それに比べて国が出したパンフレットに自分の会社が載っていて、こういう風に人材育成していますと載っているのはもの凄くPR効果は大きいですよね。
中村ITSSの導入についてですが、苦労されている会社は多い様なのですが、素直に解っている人に教えを請えば良い話と思うのですが。
高橋そのとおりなのです。そこで、とても面白い話があるのです。あるソフト会社があって、社員が 1500 名なのですけど、スキル標準を導入したと言うので、担当者の方に聞いたのです。最初は分かってなかったと、やっていったら分かってきて今の内容じゃダメだと思ったと。どういうことかというと、最初は、スキル標準は分からないのでコンサルとか、指導してくれる人が欲しいじゃないですか。分からないことを自分で勉強するような内容でもないし、しかし経営者は「ITスキル標準は自分たちでできないのはおかしい」ということでツールを買ったというのですよ。 1000 万円近くもする。だからお金が出せないのじゃないのですよ、それはどういうことかというと、「考えることは自分たちがやらなきゃいけないけど、手段として使うのはOK」と言うのです。おかしいじゃないですか。その手段が、要は診断ツールだったわけですよ。普通の診断ツールだから、「やりました」で終わりなのですね。だって、考えてないのですものToBeを、会社としてあるべき姿なんて。導入しただけ。使って「こんなにレベルが低いね」で終わりです。どうするのと、「続けなければいけないので来年もやることになっているけど、そのうちに私は転属になる」と。勘弁してほしいですよね(笑)。経営者も人材育成の担当者も。こんな人たちがいるから、真面目にやっているエンジニアが一番迷惑するのです。金を使うならもっと大事なことに使ってほしいですよね。そこが頓珍漢で、もう本当にダメだなと思うのですよ。
中村AIPが実施している教育は、アーキテクトを育てるコース、ソリューションエンジニアを育てていくコースと、ITプランナーやITマネージャーを育てるコース、この3つが大きな柱です。最近、非常に重要だと思っているのが、3つ目のITプランナーやITマネージャーの育成です。私は、ITをビジネス上のどういう課題解決の為に導入しようとしているのかということを案外良く考えずに導入されているところが多いのではないか、と考えています。要するに、以前のシステムが5年経過したので刷新しないといけない、国からの指導があったので電子化しなければならない、という様に、ビジネス上の課題としっかりリンクされたITプランニングがないままIT導入が始められてしまっている事が結構多いと考えるのです。この様な導入では当然導入効果は見込めません。先程の高橋さんのITSSを導入するという事が目的になっているという例と同じだと思います。
高橋これはIT業界にとても失礼な話なのですけどね。いわゆる教育担当の人って、一線を外れた人がなるじゃないですか。そこが一番大きな問題であって、この会社で先がないと思っている人に教育担当を任せていいのかと。それぐらいにしか教育をとらえていないわけで、そこから考え直さないとダメだと思うのです。
中村以前、今の総務大臣の竹中さんのご講演を聞くチャンスがありました。その時に大臣が、「今の日本の大人は勉強しなくなった」とおっしゃったのですね。まさしく先ほど高橋さんがおっしゃった“上がり”の人が多いのですよね。IT業界って非常に“上がり”が早いのです。 35 歳くらいになると上がってしまう(笑)。 35 歳くらいまでに一杯現場の経験をして、一旦は一人前になるのです。ところがその後、次第にリーダーや管理職の仕事が増えて忙しくなり、結局、それから先はインディビデュアル・コントリビューターとして個人を高めるようなチャンスも意欲もなくなってしまう人が多いと思います。そういう人は、 35 歳までの技術や経験をもとにしてその後の仕事をやり、部下を指導している。そういう業界がグローバルな戦いの中で生き残れるのでしょうか。
高橋IT業界って勉強しないとダメな業界ですよね。まさしく、新しい技術についていく必要はないけれど、少なくとも知っているとかですね。評価はできるとか。そういう気持ちがない限りやっていけないじゃないですか。
中村 あと結構多いと感じるのは、良さそうな教育だけど、一体誰に受けさせたらいいか解らない、何人受けさせたら良いか解らないというケースです。
高橋 それは問題ですよね。適性のない人を、何人教育を受けさせたって、それこそコストがかかるだけです。
中村 そういう意味では、今は計るものがないから、どの教育を受けさせたらいいのか分からない。計るものがないという前に、自分のToBeがないために、ビジネスの行くところがわからない。次に打つ手がちゃんと打てていないというのが、実はかなり辛口な現実ではないかと思いますね。
高橋 ものすごく欠けているところですよね。ところがユーザー企業のIT部門って、そこがちゃんとあるのです。やはりいろんなことで鍛えられて幅が広いですからね。ITサービス系の企業って本当に幅が狭いので・・
中村 ITサービスを生業にしているところですね。
高橋 だから、そういう話を未だにやったことないじゃないですか。3カ年プランを立てるといっても数字だけじゃないですか。全然考えていないですよね、人の育成なんて。一応、全部を引いた残りの金額が人材育成費用といった感じで(笑)
中村 予算は組んであっても、どうしても利益が出ない時はバッファの様に使われる時もありますよね。
高橋いつも議論しているのは、PMも必要だし、手法も必要だと。手法というのは、いろんな団体が作った手法がいっぱいあるんだけど、勘違いしているのは、手法は道具だから、それをうまく使いこなす能力が備わっていないと、少なくともうまく使えないのですよね。そのとおりやってもダメだし、そういうことをあんまり考えていないということですね。もうひとつは、PMの責任範囲というのがあって、最後に仕事を検証しますよね。そこに品質管理の人たちが後ろにいて、一般的には製品を作った後に品質管理をやるわけですが、ITスキル標準の中には品質管理がないというわけです。日本のベンダーさんですよ。たぶん外資系のベンダーさんは、そんなもの必要ないよと分かると思うのです。キャリアパスのない品質管理を作ってモノづくりの最後にお金をかけることなんて、ないほうがいいじゃないですか。プロジェクト管理の中で品質を織り込んでいくからいいわけであって。ところが会社の中に品質管理の部署があって、その人たちのモチベーションが下がるからとか訳の分からないことを言うのですよね。そんなことするなら、前でITアーキテクトを作って、ITアーキテクトがシステム全体の技術に責任を持って、プロジェクトの遂行に責任を持つのがPMなのだと。技術的なことの本質に責任を持つのはPMじゃなくて、普通はITアーキテクトなのですよ。後ろの品質管理がごちゃごちゃ言うのなら、ITアーキテクトが品質的なものをインテグレートしたものをちゃんとデザインして作った方がいいわけです。ところが、そのITアーキテクトを育成するようなトレーニングがありますかとなると、ほとんどないわけです。そこをaipさんがやっているというのはとても貴重なのですよ。ITアーキテクトは、今後の重要なキーワードになると思いますね。
中村 ITSSのバージョン2でITアーキテクトが5職種から3職種に移ったのは、私は諸手を挙げて賛成ですね。前の定義が、何だか解らんな、こんなものじゃないはずだ、と思っていましたからね(笑)。要するにインフラ系のアーキテクトだとか、インテグレーションという技術の中でのアーキテクトだとか、いわゆる業務の中のアーキテクトとか、こうなって非常に分かり易くなりました。
高橋 あれは、ITスペシャリストの上位に当たるという意味合いがあったのですけどね。
中村 そういう意味では、日本は今、大変な脅威の中にあり、地方ではなかなかITSS導入をして人材育成を戦略的に実施する事が進んでない様に見えますが、そんな中でも光ったことをやっている地域もある訳ですね。
高橋その中でもうひとつ誤解されているのは、地方だから情報はないということですね。東京でも一緒ですよ、ITスキル標準に関しては。経済産業省から出しているITSSに絡む情報は、ウェブ上のものしかないし、東京なら別の情報が取れるかというと、取れないですしね。たとえばIPAが東京にあって、IPAの人のセミナーを聞くチャンスというのはあるかもしれない。しかし、聞いてみなければどんな情報かわからないし、聞くのは1回でいいのです。IPAも全国行脚してくれたので、1回ぐらいは各地方にも来ているはずなのですよ。私が気にしていたのは、地域が取り残されているじゃないか、情報が少ないじゃないかと思われていることです。実際はそうでもないし、ITスキル標準というのは日本の標準であって、東京は大手が多いから放っておいても自分の所でやる訳で、そもそもITSSなんて地方で使ってもらわない限り、日本の標準なんて言えないわけです。だから地方で取り上げてもらいたいと積極的に地方を回っていたのです。
中村いや〜そうですか。
高橋それなのに、「これなんぼになるの?」と言われてね。 「何のメリットがあるの」と言われて(笑)。人の育成に関して、何のメリットがあるのと言われたら困りますよね。
中村その通りですね。
高橋中国だけじゃなく、インドもありだし、マレーシアも脅威ですよね。中国なんて日本語学校がはやっていて、今はインドでもすごいらしいですね。そうなってくるとターゲットが日本と分かっているじゃないですか、値段が安かったら選択肢はそっちに行ってしまいますよね。それなのに 57 万人もエンジニアがいて、さらに下流の作り込みの工程から新しく入ってくる人がいて、単価の下落とかすでに出てきているじゃないですか。そういうのを分かっている方が、地方でいろいろとお話をすると1割くらいの方が危機感を持っているのですよ。それ以外は、「お前、NPOと言って国の出先みたいなことをしやがって」と言われることもあるのです(笑)。でも、1割は「ウチは小さいのだけど、力を入れたいけどどういう方法がいいかね」とか言われるのですよ。そうやって北海道から沖縄まで回っているのですけどね、積極的なのは名古屋ですね。名古屋はこの夏から、5社ぐらい組んで、しかも名古屋のソフトウェアセンターと情産協がバックアップしてくれて、まずその5社で地方テンプレートをつくろうと。私が名前をつけたのですけどね、『ITSSテンプレート FOR 名古屋』。
中村ハハハハハハ(笑)
高橋名古屋の集まられた一般的な企業の方々が使えるテンプレートを作ろうと。いちいちコンサルを入れたり金をかけなくても、一応使えものを用意しようよと。ということを始めて、3カ月間でやろうとしています。徹底的にやろうと。まずそれを使って、参加した5社に持って帰ってもらって、実証しながらある程度うまく行ったら、名古屋地区ではそれをバラまいて使おうと。ということをやっています。で、ここまで来るのに実は2年以上かかっているのですよ。でも、2年かって最初に考えたことができていると。突破口が名古屋だったわけです。で今、そういうことに非常に興味を持って考えているのが、北海道もそうだし、新潟もやっておられます。その地域が後に続くということですね。
中村九州もウカウカできませんね。
高橋福岡は、私、だいぶ前にAIPさんに呼んでいただいたのですが、それっきりで。その時にAIPさんのセミナーがあって、その後、懇親会があって麻生知事と麻生セメントの社長さんにもお会いしたのですけどね。
中村今、ITSSの導入に興味をお持ちの企業は、福岡でもたくさんありますよ。残念ながら、どうやれば良いのかという事が分からなくて、現実は苦闘されている状況だと思います。それでお伺いしたいのですけど、ITSSの名古屋版を作るという事で5社位のコンサルティングをされて地方のITサービス産業の良くある大きさのソフトウェアサービス会社の為のITSS利用テンプレートをお作りになっているとの事ですが、それができるとプランニングのショートカットができるので、皆さんの役に立つと思うのです。ただ、実際には苦闘をするプロセスで色んな事を学ぶというプロセスもありますよね。だから、ショートカットして良い所とカットしてはいけない所、そういうのがあるのかなと思うのですが、その辺はどうお考えですか?
高橋私はね、先ほど言ったみたいに、一回辞めようと思ったのですよ。こういう活動を。それ位酷いと思った。それは経営者の方の考え方だけじゃなくて業界自体の考え方、もうひとつは若手も含めてエンジニアのスキルレベルの低さと、勉強しないという感覚。ダメじゃないかと、ここに余り力を入れても効果がないのじゃないかと思っていたのです。そういう方の意識を変革するのはとても大変じゃないですか、でも大事なのは、やってみようという気持ちが出たのだったら、やってみる事が出来るものを提供してみる事ではないか、と考えたのです。前に一歩進めるものを作ってあげようと。分からなくてもやってみれば、少なくとも前に進めるものを提供しようと。要はクリエイティブじゃないエンジニアにクリエイティブなものを求めてもダメなことと一緒だと思うのですよ。仕事を与えられてOKという人と、自分たちで仕事を創造していろんなことを前向きに考えられるような人たちがいて、そういう人にクリエイティブなことを望んだら喜んでやりますからね。それと同じなのだと思ったのですね。だからテンプレートという考え方があって、テンプレートだと考え方が後でついてきても、それはそれで一歩進むということでOKだと。
中村一歩進むということですね。なるほど、ショートカットするかしないかではなく、一歩進めるのであればやってみれば良いという事ですね。
高橋ショートカットと言っても分からないですね(笑)。使ってみてください。そして自分の会社にフィットするかどうか、考え方のスタートはそこからというやり方の方が具体的ですよね。
中村なるほど。
高橋それが、この3年間の結論です。いろいろ考えましたけどね。
中村ITSSを採用した側のマネージャー、経営者の問題はすごく大きいと思うのですけど、今度はそれを受け入れる側の従業員がポジティブに受け入れるかどうかというのも、ITSSを定着させて成功させるポイントと思うのですが、その辺はいかがですか?
高橋その通りですね。今日、発表されている2つの会社などはまさにそうで、現場がポジティブになっている。それは言われたように、経営者がいかにリーダーシップを取っているかなんですね。これを、担当者に押しつけてごく一部でやっているようなイメージを作ってしまうと無駄になるのですね。サイバードさんもそうなのですけど、執行役員が必ずミーティングに出てきて毎回、こうやって、やっていくのだよというのを社員の方に細かくいくつかに分けて説明して、みんなに協力してほしいと、こういうことをしようとしているのだということを言ってもらったのですね。そういう所と、何か知らないけど人事から降ってきて、評価されそうだという感じだとネガティブじゃないですか。実際、人事に導入されて等級制度にされて、ものすごく頑張ってきて役職も給与も上がってきた人が、お前は2じゃないかと給与を下げられているのですよ。役職も給与も下げられて、その人もモチベーションを下げるしかないですよね。リストラツールかこれはと(笑)。よくやっている人のモチベーションを下げるツールで、こんなわからないやり方をされるとエンジニアはネガティブになりますよね。で、AIPのセミナーに参加したエンジニア同士が情報交換して、ITSSを怖がるわけです。でも、本当はそうじゃなくて、最終的には個人のためにあって、個人がああいうカタチでキャリアデザインできるものは今までなかったのです。ITアーキテクトを例にとっても明確じゃないですか。会社ではあまりITアーキテクトを明確にしないですよね。ITアーキテクトの位置づけがあって、中身があって、自分はこれになってみたいなぁと、こういう風に上がっていけるねと見えるじゃないですか。じゃここまで行くのに次のレベルはどうだと、というのがキャリアパスだと言われると判りやすいわけです。システム構築の下流から上流にあがったり、会社のセールスサービスからサービスに行くなんて、これはキャリアパスじゃないですかと、本来の意味の個人がキャリアパスをデザインする環境がある程度、見えてくると。それをポジティブに受け入れられる状況を会社側が作ってあげないといけないのです。後は本人の責任ですよ。
中村会社側からのコミュニケーションが大切なのだと。
高橋経営者の方は、どうしてこういうことをするのかをちゃんと認識をして、自分の口で社員に伝える。自分がリーダーシップをとることが大事なのですね。誰かに直ぐまかせっきりにしたらダメなのです。人事にやっておけとかですね。いちばん迷惑を被っているのはエンジニア達なのです。本当は、自分達の能力をアピールできるチャンスなのかもしれないのですよ。適材適所ができるチャンスも会社にあるし、ものすごく良いチャンスなのにエンジニア側が受け入れられるような土壌がまだまだできていないですよね。
中村こういうスタンダードができてくれば、社内だけではなく、最終的には社内外で色んな仕事のチャンスが個々人にはやってくるはずですよね。
高橋 企業からしたら、あまり流動性が高まるのは歓迎ではないとは思いますけど、逆に経営者は社員が好んで留まる様な魅力的な会社にしないといけないのですよ。
中村 そうですよね。そこの緊張関係が必要ですよね。
高橋 経営者の方は言うのです。育成して優秀な社員になったら、他に取られると。なんで、してもいない教育のToBeを考えるのですかと(笑)。人のToBeは考えるのだけど、会社のToBeは考えないのですよね。
中村 魅力的な会社じゃなければ育成に関係なくいずれ会社から人は離れていきますね。経営者は常に会社を色々な意味で魅力あるものにしておく責任がありますね。魅力的な会社なら出ていく人がいても入ってくる優秀な人もいるという話ですよね。
高橋 今、経営者は両方を放棄していますよね。人を育成することを放棄し、会社を魅力的にすることも放棄している。こういう会社が成り立つ訳がないのですよ。ITSSの導入コンサルをやっていて、そこでユーザー企業を 10 社ほどやったのですね、ファイザーとリクルート、今度、サントリーだとかアフラックとか出てくるのですけど。その人たちと話していたら、自分たちにできないものは頼んでくるのです。その方が、自分たちでやってコストも掛かって、正しいかどうかも検証できないより、そういうのはプロに頼むという考え方があるのですね。教育もそうじゃないですか。マネジメントなども自分のところで変なことをやったりしないし、そういう文化は同じITに絡んでいても、ITサービスの会社はITスキルだから社内でやるべきだとか、教育なんかも一人だけ受けに行って、その人が社内で教えるなんて、できるわけないですよ。そんなぐらいの教育なら受けに行かない方がいいと。先ほど言われたコスト感覚で、選択基準や評価基準がそこにあって、本当に大事な会社の魅力とか、魅力を作るために社員を育成して実力のある会社にするという考えがない。ITサービス産業は、間違いなくピープルビジネスの世界じゃないですか。ピープルビジネスということは、投資しない限り、よくなっていくわけがないのですよ。もしくは、高い金を出して買ってくるかですよね。今は売り手市場だから、そんなに好きな人を買ってくるわけにいかないから大事な素材を育成するという考え方を持っていないといけないわけです。
中村おっしゃるとおりです。名古屋のテンプレートを貰って、人がやった後でも同じ事をやれば良いですよね。ITSSは道具なのだから、その使い方で人が苦労した苦労と同じ苦労をする事はないですね。オープンソースの考え方ですね。誰かが作って公開してくれた良いものがあるなら、使わせて貰えば良い、効率的にやろうという事ですね。これからITSSを使おうという会社は、名古屋のテンプレートで使えそうなものがあればそれを使ってみたらどうですかという事ですね。
高橋一歩を踏み出すことになりますからね。必ずいろんなことにぶつかりますからね。お金もそうだし、メンバーもそうだし、どういう会社と一緒にやるのがいいのかという、コアになってくれるところが必要ですしね。名古屋の場合は情産協とか名古屋ソフトウェアセンターがあって、分かっている人がやっているからいいのですよね。いきなり分からない人にやってみろと言ってもダメですから、そういう地域で推進する母体が絶対に必要で、そこを中心としてやる気のある会社に集まっていただくとうまく行きますよね。
中村aipはNPOです。だから、コアコンピタンシーは何かと問われると、それは“場”だと私は言っています。AIP自身には職員は私を含めて4人しかいません。しかし実は、我々はNPOであるがゆえに、いろんな協賛企業に持ち寄っていただけるモデルができるのです。良いものはみんな手弁当で持ち寄って、他の人はそれを利用し、広めてゆく。そういう場としてaipやaipコミュニティがあって、付加価値提供型のビジネスに変化させてゆこうと考えておられる方々で、aipを実験場にして頂ける。ITSSの導入についても同じ様にやる事ができると考えています。このコミュニティで、ITSS導入についても、是非勉強会を仲のいい会社数社で始めて頂ければ、と考えています。名古屋版テンプレートができあがったら、そういう会社で使わせて頂ければと考えています。
高橋スケジュールして初めてこういう尺度ができたので、使わない手はないのですよね。使っていかないとダメなのです。
中村最初は少し慣れない使い方かもしないけれども、使っていくうちに使い方がうまくなってくる部分があると思うのです。道具ですからね。是非次はその様な形で発展できればいいなと思っています。本日は、ありがとうございました。