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「顧客視点」に立った現場での業務能力の向上を目指し、企業の業績に直結するCompTIA 認定資格

2006.05.31 配信

CompTIA
日本支局
マーケティングスペシャリスト
吉村 睦美
麻生教育サービス(株)
IT教育ビジネス事業部
月成 星二

月成 CompTIA の知名度は年々上がってきているようですが、まだ詳しくは知らない企業担当者の方も多いようですので、まずは概要についてご説明いただけますでしょうか?

吉村 私たちは非営利のグローバルなIT業界団体になります。イメージで言うと日本にある社団や財団のような協会の世界版みたいに捉えていただければいいかと思います。ISO やIEEEに対して、業界の代表として、IT関係の規格標準化の提言活動を行ったり職務分析を行ったりと、さまざまな活動を行っています。その中のひとつに標準化という観点で業務の標準化を行っています。それに基づいて作られているのがCompTIA 認定資格です。CompTIA 認定資格では、「職業としてのIT能力」をひとつのキーワードとします。単なるIT知識ではなく、業務において求められる状況判断、環境評価、問題解決など、いろいろな能力をバランスよく持っているかを認定するのがCompTIA 認定資格の役割になります。そのため、企業における顧客満足度や生産性の向上といった面に反映されるような、業績に関わる能力の向上ということで位置づけられています。特に、サービスとサポート、ソリューションの3つの業務において求められる業務能力にフォーカスし、これらの業務を行う企業の間ではCompTIA 認定資格を人材育成の一つの柱としていただいている企業が増えてきています。

月成 CompTIA 試験では、「場を読む」や「業界に必要な知識」という言葉がキーワードになるようですが、他の試験との違いはどのような部分なのでしょうか?

吉村 「場を読む」というのは、すごくくだけた言い方ですが、環境評価とか、顧客の環境をいかに理解して改善を提案できるかという意味ですね。問題の設定が、お客様が主役のケースがかなり多く、要はお客様がこう考えていますとか、お客様のシステムにこのようなトラブルがありましたとか、それをどのように解決しますか、改善しますかということを問われますので、場を読んで、その環境を読みながら、何が最適な行動なのかを問うのがCompTIA 試験が他の試験と違うところですね。表現としては、私たちは「場を読む」というよりも「顧客視点」をキーワードとして使うことが多いですね。顧客の立場に立ってものごとを考えられる人かどうかというモノサシなのです。

月成 さまざまな現場に対応できるかという、対応能力を問う問題が試験の中に出てきますよね。

吉村 いろいろなIT試験があって、それぞれ役割が明確だと思うのですが、たとえばベンダー試験は各ベンダーの商品の運用構築の能力ということで商品から発想されているわけですが、私たちの試験はあくまでもお客様側から発想しているものなのです。そのため、お客様の環境をいかに理解して改善できるかが問われるわけで、いわゆるサービス能力に重きが置かれています。そうなると単なる知識だけでは評価ができないので、いろいろなお客様の環境におけるケースを想定して出題をする必要があります。CompTIA 認定資格の特徴の一つですが、実はCompTIA が問題を作っているわけではありません。このような業務を必要とされる企業様に集まっていただいて委員会を作り、職務分析をしながら、それに基づいて出題範囲を考えて、問題も現場の皆さんで作っていただくわけです。つまり、現場の方の主導で作られる、本当の意味での実務能力を評価する試験なのです。

月成 私はServer+の試験を受けたのですが、まさに機能というよりは実務的な内容で、このケースだったらこういう行動を取るでしょうといった答が問われていました。ですから、実務的な経験がないと難しいですよね。

吉村 サービスとサポートとソリューションの業務には、大きく3つの能力が求められると考えています。ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキル(論理的思考力)、それから現場における実務能力、この3つを持っているかどうかということです。私たちは、その実務能力を構成する6つの要素を評価します。具体的には顧客環境理解、問題解決能力、IT知識、業務知識、状況判断、現場対応能力であり、これらをバランスよく持っているかどうか、たとえば問題としては次のようなケーススタディがほとんどです。

CompTIA A+(Core Hardware) 類似問題
あるアプリケーションがユーザのPCで使えなくなったという問い合わせに対応する際、ユーザより収集すべき情報は何ですか?(3つ選択)
A.最近PCになされた変更事項
B.ユーザのテクニカルレベル
C.問題のパターンや頻度
D.問題の最初の発生
E.PCの年数

どれを選んでも不正解ではないが、どれが今のお客様の状況においてベストな選択なのかを選びなさい、というのがCompTIA の試験なのです。実はこの問題のポイントは、「使えなくなった」というひと言がわかる方かどうかが問われている内容なのですね。この短い文章の中でも情報収集力を問う問題なのです。「使えなくなった」というのは、今まで使えていて動かなくなったというニュアンスですね。ですから、ソフトウェアのバージョンだとかPCの古さ新しさは関係ないわけです。ここを読み間違えるとE を選ぶ人がかなり多いのですが、文面から情報収集をできていれば、まずE ははずせます。答はA/C/D なのですが、本当に現場でお客様が言っていることを理解して情報収集ができているかが問われているんですね。どこから手を付けてもよいのですが、いちばん効率的でいちばん生産性が高くて、いちばんお客様が満足する行動はどれですか?ということになります。おそらく2つぐらいに答が絞られる問題が多かったと思います。

月成 そうですね。どっちでも間違いではないなというのが、消去法でいくと出てきますよね。その後、自分の経験とかに基づいて、こちらの方がベストだなと見つけていくやり方ですね。

吉村 必ず問題文にキーワードが散りばめられていて、そのキーワードが読み取れれば、ちゃんと正解を導くことができます。単なる経験に基づいてというよりも、現場の中でいちばん最適なものを、同じ立場の現場の方々が考えてできているので、100%に近いマストな形で正解が出てくるように作られているわけです。単なるITの知識を問う試験と思われがちなところもありますが、すごく奥が深い、本当の意味での業務能力を計る試験になります。

月成 逆に言うと、知識だけの試験対策というのは難しくなるということなのですね。

吉村 そうですね。ですから記憶に頼って受かるものではなく、経験に基づいて合格するか、もしくは経験がなくても行動プロセスというかひとつの法則がありますから、それをちゃんと理解していろんなケースに当てはめなければ合格できないですね。

月成 受験者数は増加しているのでしょうか? また受験者が多い科目などありましたら教えてください。

吉村 私どもは2001年の4月に日本支局を開設し、今年で丸5年になります。その間、受験者は年々増加傾向にあります。受験者数は非公表ですが、割合としては約8割強が法人経由での受験です。この割合からもわかるように、本当に企業で必要とされる能力という位置づけが強い資格です。科目として多いのは、順番をつけているわけではないのですが、やはりA +、Network +というのが今も多いですね。どちらも全体で、A +とNetwork +が3割ずつを占め、4割を残りの試験で分けているような感じです。どちらの企業もクライアントとネットワークが業務基盤であり、その後にサーバーなのかセキュリティなのか、リナックスなのかの選択でばらけてくる感じでしょうか。

月成 じゃ、基礎として受験されているのが、このA +とNetwork +ということですね。

吉村 知識としての基礎ではなく、クライアント環境やネットワーク環境を理解することは全てのIT業務において必要とされる実務能力と位置づけている企業が多いということです。そのため、まずこれら2つの認定資格を取得して足場を固めてからそれぞれの業務に精通した人材を育成していきます。

月成 逆にA +やNetwork +の知識がないと、Security+、Server+、Linux +の問題の用語や内容が理解できないわけですね。

吉村 もちろんそうですね。Server+などの認定資格では前提ではないのですが、A +やNetwork +を持つことが薦められます。

月成 8割が法人ということは、会社の中で社員にCompTIA を取らせる取り組みをされている企業も多いということですね。

吉村 概要にもありましたように、CS(顧客満足)の向上とか生産性の向上とかに関わる試験ですので、よりお客様の満足度を高めようという意味合いで社員のスキル向上に使っていただく企業様がかなり多いようです。

月成 そうしますと、受験者が多い業界というと、やはりIT系ということになるのでしょうか?

吉村 そうですね。サービスとサポートとソリューションの業務の標準化をしていますので、職種的に言いますとカスタマエンジニア、セールスエンジニア、コンサルティング営業、コールセンターのようなお客様と接するお仕事の方々が、受験者のほとんどになっています。

月成 ということは、技術者の方はまだまだ受験される方は少ないわけですね。

吉村 求められているものが現場力になりますから、設計や開発のために必要な能力ではないのです。もちろん、システムエンジニアで取っている方もいらっしゃいますが、その場合も直接の業務につながるというよりも、お客様の環境を理解するための技術要素というか能力を高めるために取るということですね。システム開発をする際にも顧客環境を理解し、どのような運用がされるシステムなのかを見据えた使いやすいシステムを求める企業も増えてきています。

月成 環境の評価や顧客の視点といったものは、試験の科目に限らず全体を通して言えるCompTIA の特徴なのでしょうか。

吉村 まったくおっしゃるとおりです。ポリシーは、もちろんすべての科目に反映されています。

月成 また、CompTIA に開発言語やデータベース関連のような開発系の資格がないのは、そういった顧客重視の考え方があるからでしょうか?

吉村 そのとおりです。まず業務や顧客視点という面にフォーカスすると、開発系の技術はCompTIA 認定資格が持つ役割ではないと思っています。設計開発などの具体的な技術はベンダー資格や国家資格が役割を持っていると考えているのです。ですから具体的にJavaとかはないですし、たとえばLinux +はリナックスの技術と思われがちですが、こちらはリナックス業務ということで、お客様のリナックスの環境を理解して、それをどう改善するかという点で顧客視点に立った行動力や現場力を問うものです。

月成 OSを見た時に、リナックスだけがCompTIA の資格として出て来るんですが、それは何か理由があるのでしょうか?

吉村 やはり時代の流れに沿って求められている業務があると思うのですが、その市場のニーズに合わせて資格もひとつずつ増やしているということです。当初、1993年にA +が作られたのを始め、時代の流れに応じて求められる能力が増えてきて、資格もだんだん増えてきたということです。ITの業務はいろいろな仕事があり、また複雑に絡んでいると思いますので、それを効率的に実務で求められる能力を付けていくという意味では、CompTIA は有効な試験ではないかと思っています。

月成 他のベンダー試験との相違点や位置づけはどのように考えられていますか?

吉村 まず業務のプラットホームとして、私どもの試験が必要だと考えています。サービス、サポート、ソリューションを提供するうえで、現場で求められる能力が先にあって、その上に製品の知識だとか自社の強みを持っていくという考え方です。よく見受けられるのが、比喩的に言いますと、幹と枝葉で表現すると、幹となるところを商品として、枝葉となるところをお客様にしている企業様もあると思うのですね。でも、そうすると箱売りになってしまうわけです。まず自分たちの商品ありきで、ゴリ押しをしてお客様の所に使ってくださいということになってしまう。そうではなくて、顧客視点に立つためにも、幹は私たちのCompTIA 試験、そして枝葉に自社の商品やベンダーの試験を置くことによって、まずは顧客の環境というものを理解して、その後に商品だとかベンダーごとの知識を加えることによって、改善策としてベンダーの知識や商品を割り当てることが、いちばんお客様にとって満足度を高めるスキルマップじゃないかと考えています。その意味で言うと、CompTIA がまずベース、基盤となって、その上に国家資格なり、ベンダー資格を置くことがいちばんバランス的にはいいのではないかと思います。

月成 では、ベンダー試験では、たとえばシスコなどでは2年間という有効期限があったりしますが、CompTIA の場合も有効期限はあるのでしょうか?

吉村 だいたい2年から3年で試験の改訂が行われるのですが、私どもはベンダー資格のように商品に関わる試験ではないので、例えば商品自体を知らないと認定資格を受けられないといった概念や商品のバージョンという概念がありません。資格自体が業務で分類されていますので更新という概念もありません。ただ、顧客の環境は時代に応じて変わるので、それに合わせて試験の改訂をしていきます。そのため、その時々の顧客の視点に合わせるのであれば定期的に取るのが望ましいということです。有効期限はありませんが、継続的に取るか取らないかは使われている企業様や個人の方の判断に委ねています。一度取れば一生、認定はしますが、ただ5年前のA +が今の環境に合っているかどうかはわからないわけですね。それを評価するかどうかは皆様方に委ねているという立場です。

月成 これからも有効期限を設けるというのは今のところないと考えていいのでしょうか。

吉村 今のところはないと思いますね。これは余談ですが、A +だけ2科目ありますので、改訂がされた場合に1科目しか持っていない場合は、その前のバージョンでもこの期間まで試験を流しますので取らないと認定しませんよ、というルールはあります。要は、その時々の環境に応じて2科目作られていますので、違うバージョンで1科目ずつ取るとバランスが崩れてしまうわけです。

月成 ベンダー試験であれば、そこのベンダーで学習教材も作って実際にトレーニングも行われていますが、CompTIA には関しては「認定トレーニング」という形では実施されていないようですが、理由があるのでしょうか?

吉村 概要でご説明したとおり、業界の現場の方々で問題を作っていただいたものですので、その作っていただいたものでCompTIA がビジネスをしてはいけないという考え方があります。そのため、皆さんで作ったものは皆さんで共有してくださいという立場で、出題範囲も無償で公開しています。その基準に基づいてトレーニングができるのであればトレーニングを開催していただくことも、教材を作成することも問題はありませんという立場を今は守っています。ただ、教材などを作られた場合には一定のレベルまで評価をしてほしいという要望もあるため、その場合はCompTIA のメンバーになることにより、出題範囲に準拠しているかをCompTIA で確認してテキストへのロゴの貼り付けなどの許可を出しています。ただ、出題範囲が準拠しているかの確認までしかCompTIA では行いませんので、それが使いやすいのか使いにくいのかは完全自由競争主義です。

月成 では、実際に受験される方はどういった学習をされているのでしょうか?

吉村 法人での受験が多いので、企業研修という形で学習されている方はほとんどですね。集合研修なり、Eラーニングなり要は会社が用意している形です。なかでも実務能力を問うということで、集合研修を必ず行うところが多いようです。自学自習でも取れないわけではないのですが、企業の教育担当者はあまり信用していないようです。やはり現場を知って取っている人と小手先で取っている人を区別しているようで、その意味で研修を必ず受けてくださいという言い方をされる企業様もありますね。

月成 逆に言うと、企業自身もCompTIA がそういうルールに基づいてできているということを認識して、研修とかに取り組まないと社員のためにならないということですね。

吉村 そうですね。私たちの狙いを理解した上で使っていただいてこそ、業績向上にもつながってくると思います。

月成 では、CompTIA を学習する前、学習した後での変化としては特徴的なものはありますか?

吉村 たとえばある企業様では、顧客満足度調査ですべての評価が向上したというアンケート調査報告があがっています。また、別の企業では、新入社員の方で研修が終わって9カ月後のアンケートで業務に役立っている資格を見ると、A +とNetwork +が46%であったりします。また所属上司への質問で、「新人はA +、またNetwork +で得た知識・技術を活用していますか?」という質問にも、70%近くがハイと答えています。さらに、これはNTT東日本でのCompTIA 取得者アンケートのコメントですが、「お客様にプラスαの説明ができるようになった」とか、「即答できるようになった」とか、また回答として多いのは「自信を持って」という言葉がすごく出てきます。お客様に対して自信を持って答えられる、自信を持って対応できる、信頼度が向上したとか、本当に業務に直結しているからこそ出てくる言葉だと思うのです。

月成 では、取得された方の満足度もとても高いのですね。

吉村 高いですね。でも、一般の方が取られても使い方が分からないため、あまり満足度は高くなりません。逆に仕事をされている方にはすごく満足度が高くなります。だから専門学校生で取られる方もいますが、最初はよくわからないことが多く、就職して現場に出て初めてわかりました、というお言葉を良くいただきます。お客様アンケートのコメントの中に、「知っていて良かったという言うより、知らなかったと思うと恐ろしい」という言葉が、CompTIA の特徴を何より如実に表していると思いますね。

月成 最後に、これから社員の方にCompTIA を取らせたいと考えられている企業担当者の方に、ぜひお伝えしたいメッセージなどあればお聞かせください。

吉村 とかく今、設計とか開発などの高度IT人材がフォーカスされがちですが、ビジネスの維持とか開拓というところに観点を置くと、やはり運用・保守、提案業務をしている人のスキルがどれだけ高いかによってビジネスが決まってくると思うのです。CompTIA は、そのような業務の方々のスキル向上をめざしている試験ですので、ビジネスの維持・開拓という観点に立って、皆様方のスキルの向上にぜひ目を向けていただきたいと願っています。

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